第12章 サスケ君
敵は、手を上げろ、と合図するように、もう一方の手で、真後ろから私の腕を、トントンとノックする。
何故、警戒せずに洞窟へ入ってしまったのだろうか。おっちょこちょいじゃ済まない緊急事態。
しかも今日は私1人きりの任務。顔面蒼白で、最悪の事態を想定して肝を冷やした。
ゆっくり両手を上げて、降参したフリを見せる。相手がクナイを動かした瞬間に、やり合うしかない。ただ今は、敵の出方を待つのみ。
固唾を飲んでその時を待っている。でも、全然、何も攻撃してこない。ただ黙って後ろに立つだけ。
「…………?」
わけが分からずに、頭に大量のハテナマークを並べて悩んでいれば、背中越しから、声が聞こえた。
「…………花奏、不用心過ぎだ。気をつけろよ」
鋭利なクナイは、ゆっくりと喉から離れ、カチャッと任服へ仕舞う音が聞こえた。
「……え……!?」
この声を私は知っている。今、躍起になって、ナルトやサクラ、みんなが必死に探しているんだから。勿論、私もそのメンバーの一人だ。
身体を直ぐに振り返らせ、彼を見上げた。黒い髪に整った顔立ち、クールなイメージは変わらない。何年ぶりだろう……。懐かしさが私の心に広がった。