第5章 イライラ
その次の日、私は屋敷の中にある図書室で本を読んでいた。
そこである1人の少女と出会った。
「お姉さんどちら様?」
私が本を読んでいると少女はそう話しかけてきた。くりくりとした可愛らしい瞳が印象的な少女だった。
「私は悠子。あなたは?」
「あたしはチュンラン。バックス様の正妻よ。」
「正妻?」
「そう!あたしが1番バックス様に愛されてるからあたしが正妻なの!」
「そうなの。」
私は心の中で苦笑した。こんな高校生くらいの少女にも手を出しているのか奴は。しかも1番愛しているときたもんだ。
「あなたも本が好きなの?」
「ええそうね。他にやることもないし。」
「なら一緒に遊ばない?」
少女は屈託のない笑顔とともに私を図書室から連れ出し、日が暮れるまで中庭でボードゲームやお茶を楽しんだ。
少女のお話は、バックスの話題も多かったが、面白く、少女がいかにバックスを好きなのかが理解出来た-。
日が傾こうとしている時、そんな2人の様子を屋敷の窓から眺める人物がいた。
「へぇ。あんな顔できるんだ。」
バックスは手元のティーカップをおもむろに口へと運ぶ。
いつものこわばった顔とはうってかわり、笑顔を浮かべる彼女。彼の胸には、どこかじんわりと来るものがあった。