第9章 恋心
幸い廊下では誰にも会うことなく部屋に戻ると、そこには私の世話係がいた。
「お嬢様!?」
私の格好を見て驚く世話係。それもそうだろう。縛られたまま泣きそうな顔をしているのだから。
世話係はすぐ私に駆け寄ってきた。
「これ。ほどいて…。」
私は近づいてきた世話係に懇願した。
「しかし…」
珍しく世話係は口ごたえする。最近はそんなこと皆無だったのに。
「なに?」
私が問いかけると世話係はこほんと咳払いする。
「とても扇情的で美しいのでもったいないと思っただけでございます。バックス様は趣味がいいですね。」
世話係はそんなことを言いながら、私を抱きしめるように背中に手をまわし、縄の結び目を探る。
「これをしたのはバックスじゃないし、普通にほどいてくれない…?」
胸の先端が世話係の服にこすれる。
「これくらいは楽しませて頂きたいですね。」
「つまみ食いは禁止されてるはずでしょ!」
「ええ。なのでただの私の趣味です。」
私は納得出来ないと思いながらも、自分で縄を外す手段もなく、それ以上は何も言わなかった。
つかの間、静寂が流れ、私の頭にさっきの光景と感情が甦ってくる。