第1章 IF:【冬春】エース救済・主人公生存
は10歳まではエースと共にダダンの元で過ごさせてくれ、とガープにお願いした。猶予はあと4年。4年後、はエースと決別するのだ。
成長するにつれどんどん聡くなっていく。エースを残し、ガープに連れられ修行する日もあった。勉強する日もあった。まだエースが2歳の頃、の新たな目標ができた。
「海兵には階級がある…じゃあ偉い人にはある程度何かしらの権限が与えられる…?一番偉いのは……元帥、…元帥ってどれくらいの発言力があるんだろ」
権限、発言力、影響力、階級が上がれば上がるほど、それは大きくなっていく。
元帥になれば、あんな理不尽な殺戮が二度と行われないようにできるのではないだろうか。血の繋がりだけで疎まれる無害のエースが、生きやすい世界にできるのではないだろうか。
いつのまにか握りしめていた拳の力を抜く。元帥…、いつかなれた暁には、母との約束が達成されるのではないか。そう思わずにはいられなかった。
エースの元から離れる数ヶ月前、はエースに優しく接する自分を殺した。は海兵になる。それはつまり、エースの元から離れるということだ。がそばにいないエースに、1人で生きていく力があるのかどうか…答えは否、ない。生きていく力、それは単純な強さ、忍耐力、精神力、生命力。この世界は弱肉強食だ。強い奴が生き、弱い奴から死んでいく。殺された母子たちもそうだ。権力も何も無い、抗う力も存在しない弱い存在だった。
エースが1人でも生きていけるように、勝手に殺されてしまわないように、心を鬼にして厳しい鍛錬を続けた。最悪、恨まれてしまっても構わない。復讐心の執着はとてつもないものだ。私を許さない気持ちを原動力にして、理不尽なこの世界でどうか、生き抜いて欲しい。ただ、生きていて欲しい。
ただ1人の肉親からの、唯一の願い。
「私海兵になるの、わかる?…あんたの行動一つで私の足枷になる。私の邪魔するなよ」
私が元帥に上り詰めるまで待ってて、息のしにくいこの世の中を、少しでも良いものにしてあげる。エースが、自分の血筋を知って、絶望して、それでも…少しでも生きやすいようにするから。それまで大人しく、世界に決して見つからないで。