第1章 帰
病院を出ると夏菜と別れ
家に帰った
家には誰もいない
荷物をまとめていると
家族写真が出てきた
母は私が3歳の頃に亡くなり
父は海外にいる
ここ数年連絡すら取っていない
生活費や治療費は送られてくるので
生きてはいるらしい
元々こんな人ではなかった
凄く優しい人だった
全てが変わってしまったのはあの日から…
写真の中の私は2つ結びをし
麦わら帽子をかぶっていた
母はそんな私の肩に両腕を回して抱きついて
父は私の被っていた麦わら帽子に左手を乗せ
右手でピースをしていた
3人ともとても楽しそうに
歯を見せて笑っていた
その写真を優しく撫でて埃を落とし
カバンの中に静かにしまった