第1章 帰
肩に重みを感じて
目を開けると少しの間
寝ていたことに気がつく
(ん……。あれ?)
重くなった肩に目をやれは
貴澄くんの寝顔が近くにある
首から腕が周り
抱きしめている格好となっていた
ぐっすり気持ち良さそうな寝顔に
申し訳ないと思いながらも
体制がきつそうだったので
起こすことにした
「ごめん僕寝てたみたいだね」
[私も 気持ちよくなって寝ちゃってた]
テーブルを前にコーヒーの飲みながら
やりとりすると
貴澄くんが壁にかかっている時計を見た
「もうこんな時間か」
その言葉に買い物をし忘れていたことを
思い出しハッとする
[買い物……忘れてたからそろそろでないと]
申し訳なさそうにスマホを見せると
「付き合ってあげたいんだけどごめん。
隼人とこれから約束してるんだ」
パンっと顔の前に両手を合わせて
片目でのぞいて来た
[そんな!気にしないで!約束があるのにこんな時間まで付き合ってくれてありがとう]
ニコリと笑いながら
スマホを見せると
貴澄くんは安堵した顔をした
「また何か手伝えることあれば連絡してよ。
あっ!用事がなくても、連絡して」
そういうと連絡先を書いた紙を渡された
コクリと頷くのを確認すると
「連絡待ってるね」と言って
家を出た
変わらないと思っていた彼の後ろ姿は
昔と比べて大きくなっていた
夕日に伸びた彼の影
それは別人みたいで
少し寂しくなった
(大丈夫。)
気持ちを切り替えるように
首を横に振り
本来の目的だった買い物に出かけた
第1章 end
→あとがき