第1章 帰
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『ちゃん!ちゃん!
聞いて聞いて!またタイムが上がったの!
この前よりもね1.2秒も速くなったんだよ!』
ブンブンと腕を振りながら
こちらに走って来る渚
『渚〜。ダメだよ…プールサイドを走ったら』
褒めてーっと満面の笑みで
頭を突き出して来る渚を
困ったように注意するまこちゃん
『ふふふっ まこちゃんは渚のお兄ちゃんみたい』
少し面白くてそう言うと
真琴は頬を赤くして『妹と弟がいるからかな』
なんて照れながら言った
すると3個ぐらい離れたレーンから
凛ちゃんとハルちゃんの争ってる声がする
っといっても凛ちゃんが
一方的に勝負を挑んでいるようだった
『ハル!勝負だ!今日は絶対負けねーからな』
『俺は勝ち負けやタイムはどうでもいい
好きに泳ぐだけだ』
などと言っていたが
青い瞳の奥はギラリとしているものがあった
『次、凛ちゃんとハルちゃんが泳ぐんだね
ちゃん、まこちゃん一緒に見に行こうよ』
渚に手を引かれゴール近くのプールサイドに
移動して泳ぎを見守った
2人の泳ぎは
他のレーンや観客なんて見えなくなるくらい
一瞬にして目を奪われた
胸が熱くなると同時に
息をするのを忘れ手に力が入ってしまう
そのくらい興奮した
(なんか不思議な感覚…私も水を感じてるみたい)
パンっと壁をタッチする音にハッとして
いつも通りの景色に戻る
まこちゃんと渚はもうハルちゃんと凛ちゃんの所にいて
手を差し伸べていた
結果は同着
凛は悔しがっていたが
何だかんだ凄く楽しそうで嬉しそうだった
『お疲れ様!凛ちゃんもハルちゃんも凄く綺麗でかっこよかった』
泳ぎ終わった2人に近寄り
笑顔で感想を言うと
『あぁ…』
『まぁ…な…』
視線を斜め下に向けながら
少し赤くなりながらそう答えた
『次は絶対俺が勝つ』
なんて凛ちゃんが言うと
ハルちゃんは黙って睨み返していた
そのやりとりを私と渚とまこちゃんは
ニコニコしながら見ていた
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