出水と太刀川さんと風間さんに挟まれる話。【ワートリ】
第5章 第5話
目覚めがとても悪かった。
現在火曜日の午前9時。
昨日の記憶は残念なことに鮮明に覚えていた。
あの事故のあと、俺と太刀川さんは固まった日向を部屋に押し込み、さっさと寮へ戻ったのだ。
そのあと、太刀川さんと喋ることはなくそれぞれ眠りについた。
まあ、俺は4時間くらいしか寝れてないけど。
あんなことがあったあとでスヤスヤ寝れるわけがなかった。
あの感触が忘れられなかった。
「俺の…ふぁーすときす…」
あんな事故でなくすなんて。
でも、嫌なわけがなかった。
事故であったとしても、あのキスをした時、俺は日向から離れたくなかったし、もっと深くしたいと思ったから。
唇が離れた時の、あの日向の切ない表情が忘れられない。
つまりは、惚れちゃったってこと。
それに気づいてしまったのだ。
いや、ほんとは一目見た時から惚れていたのかもしれない。
ただ認めたくなかったのだ。
太刀川さんもガチみたいだったし、張り合いたくなかったんだ。
でも俺は昨日確信してしまった。
俺は日向が好き。
もっと彼女を知りたい、と思った。
…まあそれは置いておいて、今考えなければならないのは太刀川さんだ。
何を言われるのか…いや、俺から何か言っても言い訳にしか聞こえないだろうから、俺から何かを言うのは避けた方がいいんじゃないか?
よし、何か言われたら正直に言おう。
そう決めて、俺は部屋のドアを開けた。
すると目の前に、寝巻き姿で歯を磨いている太刀川さんが現れた。
──────────は?
なんで居る?大学は?
………あ、そういや昨日から休みとか言ってたような…
……クソ、見落としていた。
「………よう」
太刀川さんは昨日のことは何もなかったかのように挨拶してきた。
「…はよーございます」
俺の返事に目を合わせると、洗面所へ向かっていった。
今この寮には俺たち2人しかいないようだった。
……気まずさはんぱねえ。
俺はとりあえず朝飯を食べようと冷やご飯を温め、冷凍のエビフライを数本揚げた。
洗面所から戻ってきた太刀川さんはそのまま部屋へ行った。
…もう朝飯食べたのかな?
歯磨きしていたし、そうなんだろう。
しばらく料理に没頭していると、ラフな格好に着替えた太刀川さんが部屋から出てきて、俺がこれから食事をするテーブルに腰掛けた。