第1章 武士とは
は、何と言って出迎えてくれるか。
怒っているだろうか、泣いているだろうか。
つい早足になる。
はやる心を抑え、〇〇の住む家の戸を叩く。
出迎えたその顔に、言える言葉は何も無く。
やはり、抱きしめるくらいしかござらぬな。
甘い匂いを腕に閉じ込め、1人苦笑する。
なぁ晋助、ワシらはずいぶん手のかかる、それでもずいぶん幸せな子供でごさるな。
解説
「ま遠くの雲居(くもい)に見ゆる妹(いも)が家へにいつか到らむ歩め吾(あが)駒こま」
『遠くの雲の下に見える彼女の家に、いつ着くのか、早く着きたい、さあ歩めわが愛馬よ/詠み人知らず/万葉集』
「又あふと思ふ心をしるべにて道なき世にも 出づる旅かな」
『またあなたと再会出来るのだ、という気持ちを手引きにして、今日も私は道なき道をゆくようにこの世に乗り出します/坂本龍馬』