第1章 うそみたいなできごと。
「うん?わたしのですよ、上も下も」
「あんたこんなでかいの着るのか?」
「おっきめのサイズのダボダボ感が好きなんですよね。TシャツとかLIVEの時に買うんです。その時におっきいのを選んでて……ズボンも買う時にブカブカのを買って……」
ブカブカ・ダボダボを買ってきたことがこんな予想外のことで役に立つとは…。
このダボダボがレノさんが着たことで普通サイズになったとはいえ、これを出かける時の服にするにはだらしないというか…なんというか……。
うん、買いに行こう。
「レノさん、着てもらったばかりで悪いんですけど、」
「ん?」
「やっぱり服、買いに行きましょう!」
「…いや、これでいいぞ、と。いつあっちに戻れるかわかんねーのに服だけ増やしたってしかたねーだろ」
そう言ってレノさんがポケットに手を突っ込む。
か、かっこいい……!
「だからこそ、ですよ。今日かもしれないし明日かもしれないし、いつになるか分からないのに服がそれだけっていうのも……。ずっと家にいても息が詰まっちゃいますよ。外に出るためには服は必要です!」
スーツでいいかもしれないけどあの黒いスーツは目立つし。
ただでさえ髪色が目立つし。
ましてや、FF7は名作。【タークスのレノ】だって知ってる人はたくさんいる。レノさんは本人だけど、トレードマークの赤い髪に黒いスーツが揃えば傍から見たらコスプレイヤーさん。
「あの人、いつもコスプレしてる……」と思われるに違いない。
家に篭もってもらうのも申し訳ないし。
「いいですか、レノさん」
「ん?」
「この世界ではレノさんのように真っ赤な髪の人はそうそういるもんじゃないんです。居たとしてもちょっと特殊というかなんというか、レノさんの世界よりかなーーーーーり目立ってしまうんです」
「…へえ」
「来てしまった以上、この世界を少しでも楽しんでもらいたいですし、そのためにはちょっとした変装というか、馴染んだ格好をしてもらった方がいいと思うんです」
「…で、服を買う、と。」
「です」