第2章 満月の夜
目を覚ますと、見慣れない部屋のベッドに横になっていた。周りを見渡し、此処が何処なのかを確認する。広い屋敷の一室であることには間違いは無いが、人が住む家としては、何かが足りない…。そんなことを考え込んでいた。
ふと、ベッドの白いシーツを見ると、窓から入ってくる月明かりの色が、赤いことに気付き、キサラは窓辺に寄った。
“真っ赤な月”。血のような赤色が大きく映し出されていた。
周りは大きな木に囲まれていて、自分のいる部屋はとても高い場所にあることに気付いた。
キサラは確信した。自分は“ヴァンパイアに攫われた”と。
けれど恐怖は無かった。多くの人間が思っている程、ヴァンパイアは恐ろしくは無い筈だ。
キサラ:「だって、現に生きているんだもの。直ぐに殺そうとなんてヴァンパイアはしないわ。」
そう言いながら、窓辺から離れようとした途端、部屋のドアが開いた。