第5章 神の手
マルクとイリア、キサラの三人で城のロビーへと向かうと、サイドの髪は短く、後ろだけが長髪の大人しそうな男性と、金髪が目立つ、短髪の賑やかな青年が居た。
マルクが来た事に気付くと、金髪の青年がキサラの前に瞬時に移動してきた。
金髪の青年:「へぇ。アンタがマルクのお気に入りねー。
いい匂いすんもんな。顔がいい人間は良い血持ってっからな。」
そう言いながらキサラに触れようとした途端、マルクが彼の手を力強く掴んだ。
マルク:「やめろ。ウィーダ。」
ウィーダ:「いでででっっ!!わ、わかった!やめる!」
そういう彼の顔は青ざめている。相当な力で掴んだのだろう。
キサラは焦ってマルクに声を掛けた。
キサラ:「マ、マルクっ!私は大丈夫だから。何もされていないわ!だからその手を放して?」
そう言うと渋々手を放す。
しかし目にはかなり怒りがにじみ出ている。
ウィーダと呼ばれた青年の手首を見ると、既に青あざになっていた。
それに気付いたキサラは急いで彼の手を取った。
キサラ:「っ大変!急いで処置しないと!ごめんなさい。私のせいだわ。」
そう言ってキサラがあざになっていた所を触れるとキサラとウィーダが光に包まれる。
光源のように輝くキサラの金髪はこの世界のどの光よりも美しく、その姿にヴァンパイア達は目を奪われていた。
光が収まると、ウィーダの手首にあったあざは消えていた。
それに驚いた皆にキサラは微笑んで答えた。
キサラ:「幼い頃からこの力を持ってるの。異様な力を持ってると街の人達には魔女だって言われちゃうから、お父様以外、誰にも言わずに過ごしてきたの。
私だって。街のみんなが言う【普通】じゃないわ。」