第19章 姫巫女と隠し扉の罠
「まさか、何百羽もいるなかから、この扉に合う鍵の鳥を捕まえるっていうの?」
「できるさ、君なら! 何たって、百年に一度の才能を持ったのシーカーなんだから!」
箒は一本しかない。
目を凝らすハリーは、「あ」と声を漏らした。
「見つけた。多分、間違いない。明るいブルーの羽の鳥……羽が片方ない……!」
ハリーが狙いを定めて箒を手に取る――と同時に、鍵の鳥たちが一斉にハリーめがけて鋭く飛び、襲いかかった。
「ハリー!」
「そう簡単にはいかないか!」
悪態を吐くロンを前に、シオンも何かできないかと頭を働かせる。
けれど、それほど深く考える時間はなかった。
百年に一度の才能を持ったシーカー。その肩書きは伊達ではなかったのだ。
猛スピードで鍵の鳥の隙間を縫っていくハリーは、めいいっぱいに腕を伸ばし、目当ての鍵を掴んだ。
「シオン!」
放るように渡された鍵の鳥をすれ違い様に受け取り、暴れる鍵の鳥を押さえつけて鍵穴に差し込む。
「開いた!」
扉を開いて、シオンたちは中に入る。
「ハリーッ!」
ハリーはまだ、鍵の鳥たちと格闘していた。
「月映さま!」
『世話の焼ける奴らよ!』
金色の軌跡が駆け抜け、一瞬だけ鍵の鳥たちを散らす。その隙に、前屈みになったハリーが素早く扉へ入って来た。
バタンッと勢いよく扉を閉めると、カッカッカッと木の扉に鍵が突き刺さる音が聞こえる。
「ゲツエイは⁉」
取り残されたと思ったのか、ハリーが月映を呼んだ。
『我はここだ。あの程度に遅れは取らぬ』
フンッと鼻を鳴らし、再び姿を隠した。
四人は先へ進んでいくと、薄暗い通路が続き、火の灯りで照らされた空間が現れる。
黒と白の床の上には、いくつも石像が並んでいた。シオンたちが入って来た側には黒い石像、奥側には白い石像だ。
一番低い石像でも、シオンたちより大きかった。白い石像が並んださらに向こう側には扉があるようだ。
シオンたちが背の低い白の石像の間を抜けようとすると、阻むようにして石像が剣で牽制する。