第9章 私の居場所
「まったく、楓は、手のかかる子だね〜。」
しゃがんでいた先生が少し体勢を変えると、へたり込んでいた私の目の前にきて、
私は先生に優しく包み込むように抱かれていた。
「カカシ先生…?」
「はー。楓、先生も弱音吐いていい?」
「えっ、うん。いいよ。」
「隣にいるのに、届かないんだ。いつだって楓には。
オレがどんな気持ちで楓を大事に思ってるかなんて、ちっとも届いてないんだから。
大事じゃない人にこんなことすると思う?
それとも、楓ちゃんはカカシ先生との思い出なんかすぐに消えちゃうの?
オレ、そしたら割と傷つくんだけど…」
先生の髪からほのかに石鹸の香りがする
「ふふっ」
「ちょっと。なんで笑ってるの?」
先生の背中に腕をまわす
「カカシ先生、なんだか可愛いなぁって。
一生懸命、私が大切な生徒だって、伝えてくれようとしてくれて。
でも先生、こんなことしてる所を先生の本命の人に見られちゃったら、大変だよ。
…ちゃんと伝わったから。もう大丈夫だよ。ありがとう。」
(隣にいるのに伝わらないのは、一緒だね。先生。)
「オレの本命って…なんの話…」
先生が言いかけた言葉は聞こえなかったふりをして、一度力を込めて先生に抱きついてから、私は離れた。
「第七班、立花楓、ちゃんと頑張ります!」
私の居場所は、ここだ。
また今日から、やり直そう。
ぜんぶ、やり直そう。
そして、次の恋は、きっと…叶いますように…。
「カカシ先生、本当にありがとう」
もう期待するのはやめよう。
私の初恋、本当に、本当に…幸せだったよ。