第10章 合格?×不合格?×最終試験
パーティがお開きになった頃には、もうだいぶ日が暮れていた。
私のために部屋が用意してあると言うので出発は明日に変更した。
数日ぶりの水浴びを堪能し、ふかふかのベッドへ身を横たえる。
「やっぱりベッドは最高だ」
ベッドの素晴らしさを覚えてしまった今、故郷の、あのわらに毛皮をかぶせただけの寝床ではもう満足できない。
故郷へ帰る時には、ベッドを一緒に持って帰ろう。
そんな事を考えながら目を閉じると、今までの疲れが一気に押し寄せてくるのを感じた。
「はぁ」
疲れて眠りたいのに、先程の会話が気になって眠れない。
パーティがお開きになる少し前の事、
酔っ払ったアルトゥールとズーリィが椅子を振り回し始めたため、ロボスとビーンズさんが2人を止めるために席を離れた時、
「……アマゾネスは、本当に女しか生まれぬのか?」
と、不意にネテロ会長から問いかけられた。
普段なら、「はい!」と即答していただろう。
しかし、この時はすごく引っかかった。
故郷を出るまでは男なんて見た事なかったし、男が生まれたと聞いた事もない。
ので、
女しか生まれない。
そう断言したいのに、出来ない。
「ほっほっほ! 困らせてしまったか。 すまんすまん」
スッと目を細めて何事も無かった様に笑うネテロ会長。
「さて、ワシはそろそろ失礼するとしようかの」
「は、はい。おやすみなさい」
出口へと向かうネテロ会長を目で追いながら、今の会話の意図は何だったのかを考える。
「ニーナ」
「はい?」
扉の前で振り返えったネテロ会長。
「故郷へ帰った時に、スイレンによろしく伝えておいてくれ。それじゃあ、おやすみ」
「え?」
「スイレンって誰ですか?」と聞く間も無く会長は部屋を後にしてしまった。
そして今に至る。
ネテロ会長はアマゾネスと何か関わりがある。
私がアマゾネスだと言う前から既に知っていたと匂わせる様な発言もあった。
せっかく良いベッドで眠れるのに、考え過ぎて目が覚めてきてしまった。
「スイレン」
同胞の名前は全て知っている。
その中に“スイレン”という名を持つ者はいなかったはず。
…………そういえば、1人だけ名前を知らない人物がいる。
「婆様の名前、聞いた事ないかも」