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覇者×ト×敗者

第4章 奇怪×ナ×奇術師



くじら島から出航した船には、私と同じようにハンター試験を受けるであろう人が大勢乗船している。
ナタリー達の船とは違い、男しか見当たらない。
特にする事もなく、海を眺めることにした。
海は穏やかで陽の光を反射して輝いている。

「綺麗だなぁ

数時間後、大嵐に巻き込まれることも知らずに呑気に呟いた私である。



「ああ"あ"ぁあ"ぁー」

大嵐に巻き込まれ、船内に避難した乗客達は中で揉みくちゃにされていた。

「う"っぷ」

柱にしがみつき、何とか吐気を治めようと努力する。
気を紛らわせるのが一番だけど……何か、何か気を紛らわせるもの……

__そうだ!

私は荷物袋から芋を取り出した。
この芋は、市場でゴンと一緒に今朝買ったものだ。
芋を両手でぎゅっと握りしめ、全神経を芋へと集中させる。

「……ふぅ」

しばらくそうしていると吐気が治り、周りの悲鳴も気にならなくなった。
恐るべし芋の力。 そしてありがとうございます。
嵐が過ぎ、船の揺れも穏やかになった頃に船長が乗組員を数名連れて様子を見に来た。

「どれどれ、今年の客はどうかな」

「例年通り、ほとんど全滅です」

「情けねぇ奴らばっかりだな……ん?」

「あ」

船内を見回す船長と目が合う。
船長は怪訝そうに私を見つめている。 正確には私が握っている芋を。

「なんで芋なんか握ってんだ?」

「握っていると落ち着くので……あと、好きだからです。 芋が」

そう言えば、船長は驚いたように目を見開き、笑い出した。

「はっはっはっは! 変わな奴だな、嫌いじゃない」

私が芋を握っている事がよっぽど可笑しかったのか、船長は笑顔を浮かべたままだった。
しかし、次の言葉を聞いて血の気が引くのを感じた。

「こいつらを脱落者として審査委員会に連絡してくれ」

そんな……結構頑張ったのに…
しょんぼりしていると、船長がハッとしたようにこちらを振り返った。

「お前さんはギリセーフだ。 ついて来な」

「ッ!? は、はい!」

良かった!とりあえず一安心!
嬉々として船長について行く。
辿り着いたのは操縦室だった。

「名前は何ていうんだ?」

「ニーナと申します」

「ハンターになりたい理由は?」

「強い男と戦うためです」

この発言を聞いて、船長と乗組員達は唖然とした。
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