第26章 軍艦×デ×脱出
ゴンに毛布をかけているとキルアが急いで駆け寄って来た。
「ゴン!」
『大丈夫、気を失ってるだけだから。 彼の側に付いていてくれる?』
うん、と頷いたキルアにゴンを任せて、私は手伝いが必要な人が居ないか見て回る事にした。
歩き出そうとした時、
〈クラピカ! 大丈夫かクラピカ!〉
離れた場所でも連絡が取り合える管からハンゾーが必死にクラピカを呼んでいた。
『クラピカ、どうかしたのかな?』
「そういえば、急に返事がなくなったんだ」
『それってなんかあったんじゃないの?』
「船は操縦されているから大丈夫なんじゃない?」
心配だから一応見に行こう。
操舵室へ向かうと黒髪の背の高い人物が舵を握っており、その横でクラピカが倒れていた。
『クラピカ!』
「頭を打ったみたいだから手当てしてあげなよ」
頭部を見ると綺麗な金髪が赤く染まっている。 自分の服を裂いて急いで止血をする。
手当てをしながら、ちらっと視線を舵を握っている人物に向ける。
こんな人いたっけ…?
受験生の中にこんな人居なかった気がする。 一体誰?
上手く言い表せない不気味さを感じる。 知らない人だからじゃない。
関わったらいけない、敵意を向けられていないのに恐ろしい。
船の操縦なんて私には出来ない。 誰にせよ、今は舵を握ってくれている事に感謝しよう。
数時間後、嵐の中でも軍艦は見事に持ち堪え、無事に朝日を拝むことが出来た。
海が穏やかになり、自分の役目は終わりと船室を出て行く時に見えたその顔にゾッとした。
あんなに瞳の奥が“無”な生き物を見た事がない。
やはりあの人物は関わってはいけない。
「……ん、私は一体…っ船は」
意識が戻ってすぐさま立ちあがろうとするクラピカを落ち着かせ、窓から差し込む朝日に目を細める。
『急に動いたらダメだよ。 もう大丈夫だから』
甲板では過ぎ去った危機に皆安堵して喜びを分かち合っており、遠くの空からこちらに向かってくる飛行船も見える。
あの大嵐を乗り越えたんだ。 みんなの力で!