第22章 姉様×ノ×能力
「ただいま」
「おかえりなさい!」
エッダ姉様が戻ったのは、セラとジェンがここを発って数日後だった。
2人のことを話すと嬉しそうな表情で聞いていた。
しかし、セラの顔の怪我と能力のこと(私の未来のことは伏せて)を話した途端、無言で一点を見つめたその眼は血走り、額には青筋が浮んだ。
相当怒ってる時の顔
「セラは、怪我を負わされた相手について何も言わなかったか?」
「はい。特に何も言わなかったです」
私達アマゾネスが怪我をするのは珍しいことではない。
戦いを申し込んだ相手との戦闘で死んだり、手足を失ったりしても相手を恨むことはない。
それは己の実力不足が招いた結果だから。
姉妹が戦いで死んだり傷ついたりしたら当然悲しい。
けれど、仇を討とうとは思わない。
エッダ姉様がこんなに怒りを露にしているのは、私がセラの傷に悪意を感じたと言ったからかもしれない……
「そうか。……この話はここまでにしよう。練の修行は順調?」
「30分間保てるようになりました」
練の修行を始めて数ヶ月。
やっと30分間保てるようになった。
「悪くない。その調子で続けるように」
「はい。それと、ヒソカを倒す為の作戦を思いつきました」
ジェンのお陰で思い出した“叫び”を使えば勝てる!かも。
「それなら良い」
「どんな作戦なのか聞かないのですか?」
「ああ。作戦を思いついたならそれでよしとしよう」
「は、はい……」
姉様に「納得できる作戦を思いつかなければ戦わせない」と脅されたので、てっきり作戦について詳しく聞かれると思っていたけれどあっさり許可を出してくれた。
あんなに脅されてたのが嘘みたい。
一体どうしたんだろう。
翌日、姉様は丸一日部屋に籠ったまま出て来ることはなかった。
心配だったが、忙しいかもしれないのに邪魔をするのが申し訳なくてそっとしておいた。
翌々日には、「急用ができた」とだけ言い残して出て行ってしまった。
やはりなんだか様子が変だ。
上手く言葉では言い表せないけれど、今の姉様を言葉で例えるなら……
「虚無」