第20章 とある民族学者の論考 Ⅳ
空港まで案内し、チケットの買い方も教える。
「ご親切にありがとうございました」
ただの気まぐれで親切にしただけだが、こうして感謝されるのも悪くない。
「どういたしまして。天空闘技場は遠くからでも見えるから、向こうの空港に着けば直ぐに分かるよ」
そう教えれば再度お礼を言われた。
笑顔で答え、空港を後にしようと背を向け歩き出したが、慌てたように呼び止められた。
「あ、あの!」
「?」
「これ、どうぞ!」
彼女の両手には、袋に入った芋が3つ。
これを……オレに?
「芋を貰ったのは初めてだ……」
「蒸してそのまま食べても美味しいのですが、肉と一緒に煮込むとより美味しいですよ!」
「ありがとう、今日の夕飯にするよ。それじゃ」
変わってる……かなり、変わってる……
戸惑いながらも何とか笑顔で礼を言う。
芋が嫌いなわけではない。
ただ、どうぞと渡されたら反応に困ってしまう。
そんな変わってる子に少し興味が湧いたので、気配を絶って観察することにした。
「!」
あれはハンターライセンス。
一応ハンターなのに……天空闘技場の場所も知らないのか……
野生児なのか?
そうなら全てに納得がいく。
ハンターなら近い将来念を習得することになる。
彼女はどんな能力を得るのだろうか。
こんなことを言っては失礼だが、彼女のような変人の念能力は面白いものが多い。
面白い能力なら是非手に入れたい。
天空闘技場で覚醒するかもしれない。
試合に出るのなら観戦したいとも思うが、問題がひとつ。
あそこにはあの戦闘狂がいる……
さて、面倒な男に会うことなくどうやって天空闘技場へ行こうか。