第20章 とある民族学者の論考 Ⅳ
団員達と別れ、自分も帰路に就く。
自宅と呼べる場所は複数存在し、気分によって帰る場所を選んでいる。
今回はあの国にある自宅へ帰ろう。
飛行船に乗り、ツェザールの日記を読む。
一通り読んだ後、名前がアンネだと判明した女性の写真を眺めた。
何故だか今は、日記の内容やアマゾネスよりも、ウボォーの様子が気になる。
全てが繋がっているような気がするのだが、まだハッキリと繋がりの糸が見えない。
この女性・アンネに似ている誰かを思い出したのか?
ウボォーの身近にいた女性の誰か。
確か、母親と一緒に流星街へ来たと言っていた。
ウボォーと知り合った頃には、もう既に母親は亡くなっていたから顔は知らない。
今度流星街へ戻って、この女性に見覚えのある人がいないか探して見るか。
ただ単にウボォーの母親に似ていたのなら、あの反応にも納得がいくのだが……
数日後。
長い飛行船の旅が終わった。
船内で退屈していたので、気分転換に徒歩で帰ることにした。
日記を片手に歩いていると、背後から声をかけられた。
「すみません!」
「はい?」
「………」
ジャポンの民族衣装と思しき衣服を身に纏った女性がそこに立っていた。
オレの顔を無言で見つめた後、口を開いた。
「天空闘技場へはどうやって行けますか?」
これは困った。
一体どこから教えてあげればいいのか……
「天空闘技場へは、ここから飛行船で4日は掛かりますよ」
とりあえず、ここから天空闘技場までの距離を教える。
彼女は驚きで目を見開いたかと思うと、見る見るうちに顔を真っ赤に染めていく。
「ありがとうございました!」
大声で礼を述べられ、そのまま走り去ろうとする彼女を呼び止める。
きっと空港の場所も知らないだろう。
「良かったら空港まで案内しようか?」
「……よろしくおねがいします」