第1章 初メ×ノ×始メ
既に出発していた姉妹達の姿はもう見えない。
私達を捕食しようと魔獣が襲いかかってくるが、戦闘に目覚めた私達の敵ではない。
軽くあしらってそのまま木々の間走ってしばらく、ジェンが突然口を開いた。
「私、こっちへ行く」
「え?どうしたの突然」
「そっちに何かあるの?」
私とセラは訳が分からなかった。
なぜなら、ジェンの視線の先から特に特別なものを何も感じなかったからだ。
「母様に聞いた事があるんだ。 どうやって自分に相応しい相手を見つけられるのか。 一目見ただけでは分からないからな。 そしたら「本能に従えば良い」って。 そして今、その本能がこっちへ向かえって訴えているんだ」
「そうなんだ。 じゃあ!ここでしばらくのお別れだね、ジェン!」
私は拳を作って腕を胸元の前で構えた。
ジェンも嬉しそうに拳を作って、その腕を私の腕と交差させた。
これはアマゾネスの挨拶。
誰かと別れる時に交わす挨拶で、「ご武運を」という意が含まれる。
「生きてまた会おうな! ニーナ! セラ!」
「また会う日まで!」
ジェンと別れてしばらく走っていると、今度はセラに声をかけられた。
「ニーナ」
「うん!」
私はもうセラが何を言うのか分かっていた。
ジェンの時と同じように挨拶を交わした。
「外の世界では食べ物をくすねたりしちゃダメだからね!」
「気をつけるよ!」
2人との別れは、思っていたよりも寂しくはなかった。
むしろ、お互いどれほど強く(そして大きく)なって再開できるのかが今からとても楽しみだった。
「あの2人よりも強くでっかくなって帰ってくるんだ!」
そう決意した私は、本能が示す先へと走り出した。