第17章 とある民族学者の論考 Ⅰ
「今回は何をするんだろ?」
薄暗い廃屋の中に集う数名の男女。
その中の、少し癖のある髪を高く結った和装の女が顎に手を当てながら考え込む。
「ワタシ達盗賊。モノ盗むに決まてるね」
黒尽くめの男が間を開けずに答える。
「んなもん何でもいいだろ! オレはとにかく大暴れ出来りゃそれでいい!」
猛獣を彷彿とさせる出で立ちの大男は豪快に笑う。
「列車の席を予約しておくよう頼まれたけど……あ!団長が着いたよ」
人懐っこい顔をした好青年の声で、皆の視線がある一点に集まる。
視線の先にはスーツに身を包んだ男がひとり。
熟練ハンターでも迂闊に手が出せない悪名高き盗賊集団の頭領____幻影旅団団長・クロロ=ルシルフル。
「待たせたな。今回はこのメンバーである研究論文を盗む」
今回集まったメンバーは、マチ、ウボォーギン 、シャルナーク、フランクリン、フェイタンの5名。
「団長、それはどういう研究論文なんだ?」
皆が気になっていることをフランクリンが質問する。
「ツェザール=バーバードという民族学者の研究論文だ」
"民族学者"
団員達はなぜクロロがその研究論文を盗むことに決めたのか理解した。
研究対象となるような民族は何かしらの"お宝"を持っていることが多い。
クルタ族の緋の目が良い例だ。
今回盗む研究論文の中に、次の獲物(ターゲット)と成り得る"お宝"の情報が載っているとクロロは見込んでいる。
「詳しい話は移動しながら話す。 出発だ」
シャルナークのハンター証(ライセンス)で予約した列車の特等席に乗り込むと、クロロは早速話し始めた。
「ツェザールが研究していたのは、アマゾネスという民族についてだ」
「初めて聞くな。その民族にはどんな特徴があるの?」
シャルナークが興味津々に尋ねる。
「アマゾネスに関する情報は規制されていて調べることが出来なかった。 存在を知ったのも偶然だ。 唯一得ることが出来た情報は、アマゾネスについて研究していた民族学者がいたということだけ」
だからその研究論文が必要なのだ。
アマゾネスがどんなお宝を持っていて、どこに隠れているのかを知るために。