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覇者×ト×敗者

第12章 君にさよならを




おとこ……?


それが何を意味しているのか分からなかった。
けど、良くない事らしい。
母様や姉様達が険しい顔でざわめきだしたから。

「出産に立ち会ったのは!?誰じゃ!!」

婆様は声を荒げた。

「……私が……立ち会いました」

「なぜ男が生まれた事を黙っておった!!?」

出産に立ち会ったと名乗り出た母様に婆様が詰め寄る。

「私が……私が誰にも言わぬようにと頼んだのです!彼女は何も悪くありません!私ひとりだけを罰して下さい!」

ウボォーギンを抱きしめて、母様は涙を浮かべた。
婆様は怖い顔のまましばらく沈黙した後、

「選択肢をやる。その子どもを今ここで殺すか、その子と共に村を去るか。選びなさい」

「!?」

婆様がそう言った瞬間、ウボォーギンを抱きしめている母様から、あの見慣れた煙が溢れ出してきた。
当然見えていない皆は反応を示さない。

「………この子と共に、村を去ります」

そんな……
もう会えなくなってしまう。
全て私のせい……私が招いた結果。
ウボォーギンとひとりの母様を不幸にしてしまった。

「……そうか」

母様がウボォーギンの手を引いて歩き出す。
母様が歩き出すと、煙が足跡を残すかの様に空気中に溢れていく。
漂っていた煙は、今の様に誰かから出たもの……?

今はそんな事を考えている場合ではない!

遠くへ行ってしまう。
せっかく仲良くなれたのに。
ウボォーギンがまた寂しい思いをしてしまう。
後を追いかけようとしたが、姉様に腕を掴まれてしまった。
ウボォーギンが悲しそうな顔で振り返り、私に手を降った。
涙で滲む視界にその姿を映しながら、なんとか手を振り返す。
今の私には、さよならと手を振る事しかできない。
いつもの様に手を振れば、またいつか、いつもの様に会える気がしたから。


この村を発つ時になったら、必ず探しに行く。


母様から溢れていたあの煙は、道しるべの様にその場に漂ったままだ。
これを辿れば、きっと見つけられる……!
この煙は、ウボォーギンと再開するための道しるべだ。




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