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【YOI夢】ファインダー越しの君【男主&オタベック】

第4章 エピローグ


「どうした?」
「…何でもない。ただの独り言だ」
そう返すオタベックに、守道は僅かに眉を顰めた。
彼の表情と、辛うじて聞き取れた「この人は、あいつらじゃない」という彼の祖国の言葉の意味に考えを巡らそうとしたが、オタベックの視線に気付き、思考を中断する。
「ピーテルでもモスクワでも、ずっと思ってたけど…貴方の手は、本当に温かいのだな」
「君の頬が熱いだけだろ」
漸く互いの想いが通じ始めたこの時を、今は堪能したい。
そう思い直した守道は、自分の手に身を委ねているオタベックの身体を、更に包み込んだ。


公園の一角に佇む、かつて日本人抑留者達が建設に関わった劇場のオブジェを、守道は感慨深げに見上げていた。
元は市内の劇場だったのだが、21世紀になって間もなく取り壊しが決まった際、現地の市民達が反対の声を上げた結果、一部を公園に移転・保存する事になったという。
守道は別段戦争を賞賛するつもりはないが、この異国の地で彼らが成し遂げた功績と、それらに対するカザフ国民の想いは、紛れもなく本物なのだと考えていた。
「そうやって眺めるのも結構だが、撮らなくて良いのか?」
劇場の円柱の陰から、オタベックが顔を覗かせて来た。
夏の日差しの中、公園の噴水では水遊びに興じる子供達の歓声が湧いていたが、守道は一心に劇場を見つめ続けている。
「いや…我ながら、随分遠くまで来ちゃったなって」
「昨年までロシアにいたのにか?」
「ピーテルは、半分成り行きだったようなものだしね。まあ、そのお蔭で今君と、こうしてここにいるんだけどさ」
口元を綻ばせた守道を見て、オタベックは照れ隠しに横を向く。

オタベックと『写真仲間』以上の関係を始めた守道は、同時に彼に隠された過去の深い傷を知った。
小さな頃から『英雄』として国の期待と希望を担っていたオタベックは、家族にすら本当の事が言えず、孤独に闇を抱え続けていたのだ。
「自分は本当は『英雄』なんかじゃない」と苦悩するオタベックに、守道は「君はちゃんと自分の力で『英雄』になったんだ。でも、俺の前では『英雄』でいる必要はないんだよ」と、長い間堪えていた彼の感情を曝け出させたのである。
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