【YOI夢】ファインダー越しの君【男主&オタベック】
第3章 公私の国交
『今の内に、家族とも自分自身とも向き合うた方がええ。これから年取ったら、どんどん色んなしがらみが邪魔をして、その時にはやりたい思うても出来ひんようになってまうからな』
かつて自分の身の上を打ち明けた守道に、お節介な先輩は、そのように諭してきた。
当時アスリートとして致命傷を負い、生き甲斐だったものを失くしていたにも関わらず、純は、自分のようなろくでなしを気遣ってくれたのだ。
傷を舐め合いたかった訳ではないが、純とならもう少し深い所で判り合えるのではと考えていた矢先、彼は自分を置いてスケートの世界へと戻っていった。
彼を取り巻く境遇を見れば、それはごく当然の流れだった。
所詮人は、他人どころか自分の事すら思い通りには出来ないのだから。
諦める事には慣れている。
「どうしようもない事」「自分は欲しい物は手に入らないのだから」とやり過ごすのは、昔から得意だった。
その筈なのに、何故今自分は、この異国の青年から目を離せないのだろうか?
「貴方はズルい。内心ではエゴな想いを燻らせている癖に、そうやって何でもないふりをして。そんな見え見えの仕草をサユリが放っておかないのも、始めから判っていた癖に!」
「お、おい」
「養子というが、篠大使と貴方は血の繋がりがあるじゃないか!大使達は、打算と義務だけで長い間貴方を育ててきた訳ではないだろう?彼らの貴方への愛情を、他人の気持ちを、貴方が勝手な自己完結で否定してるだけだ!」
ソファから立ち上がり、感情のまま声を荒げるオタベックは、次第に自分でも何を言っているのか判らなくなってきた。
アルマトイに戻ったオタベックが、自宅で写真の整理をしている所へ、かつてオタベックにカメラを与えた叔父が訪ねてきた。
そこで、オタベックが守道と過ごした撮影会の話に予想以上に食い付いてきた叔父は、甥と男の撮ったものを見比べた後で、次のように言った。
「お前達は、互いに普通以上の想いを持っているようだね」
叔父の言葉に面食らいつつ「彼の撮影技術は高いとは思うが、もう会う事はないから」と返したオタベックだったが、叔父はもう一度2人の写真を見ながら、口元を綻ばせたのだ。
「ここまでピッタリと、ファインダーを通じて相手に想いを寄せた写真も珍しい。お前達はきっと、また何処かで巡り合うだろう」