【YOI夢】ファインダー越しの君【男主&オタベック】
第3章 公私の国交
扉がノックされ、公邸の料理人助手から熱いミルクティーが差し入れられた。
「肉料理やデザートもいる?」
「シーズン中だから、気持ちだけ頂いておく」
同級生のカザフスタン人から、彼の国のティータイムについて聞いた事がある守道は、オタベックに尋ねたが、オタベックはやんわりと辞退する。
紅茶よりミルクが多めのそれに、今夜会った中で一番リラックスした顔で口を付けるオタベックを、守道は口元を緩めながら盗み見た。
暫し無言でカップを傾けていた2人は、ひと息ついた後で改めて互いに視線をかわす。
「何か、知りたそうな顔をしてるね」
内心同じ気持ちを抱いているのを隠しながら、守道は切り出す。
オタベックは反射的に顔を背けようとしたが、ややあって何かを決したような表情になると、口を開いた。
「うちの国の大使と貴方のお父様とは、昔からの知り合いだと聞いた」
「…ああ。ソ連時代それぞれの国の書記官だった頃には、色々と公には出せない武勇伝を2人で築き上げていたようだけど」
「その2人が切欠で、二度と会う事のなかった筈の俺と貴方は、もう一度巡り会った。大使が言っていた。貴方は若い頃のお父様に良く似ていると」
「それは、ただの社交辞令だよ」
しかし言葉を続けた途端、間髪入れずに守道の口から硬質な声が飛び出し、オタベックは戸惑いがちに守道を見る。
「大使は、あからさまな世辞を言うような人ではないが…まして、長年の友人の篠大使の子息である貴方の事を」
「有り得ないよ。だって、俺は養子だから」
「…え?」
「俺は、あの人の本当の息子じゃない。俺の存在が『異端分子の厄介者』って所以さ」
自嘲気味に呟かれた守道の小さな声は、オタベックの鼓膜と胸に重く響いた。
言葉を失ったオタベックを眺めている内に、守道は、何故か自分の舌が自然と滑り始めるのを覚えた。
「俺の本当の両親は、俺が子供の頃に事故で亡くなってね。今では写真や動画を見ないと、顔を思い出すのに若干苦労する程だ。彼らの死後、俺は亡き父の兄である篠大使に引き取られたんだ」
「…」
「…そんな顔しなくても良いよ。君の心配しているような事は全くなかったから」
すっかり固まってしまったオタベックに、守道は苦笑した。