【YOI夢】ファインダー越しの君【男主&オタベック】
第2章 グレースケールではないモノクローム
「大丈夫か!?」
鋭い声で質す守道に、オタベックは身体の何処にも痛みや違和感がないのを確認すると、小さく頷く。
「何だ?どうした?」
「棚からモノが落ちただけだ。2人とも無事だから心配すんな」
外からの呼びかけにぶっきらぼうに返事をする守道を、オタベックは半ば呆然と見上げていた。
突如腕を引かれ、そのまま抱き込まれたかと思いきや、それまで自分がいた場所から鈍い落下音が響き、オタベックは彼に助けられたのだと知った。
自分より上背のある守道の表情に、オタベックは思わず目を見張る。
これまで見た事のなかった真剣な眼差しと、先程から自分の顔に感じる温もりは。
「あ…すまない」
自分の身体の下でオタベックを庇うような体勢を取っていた守道は、弾みで己の右手が彼の左の頬に触れているのに気付くと、些か慌てたように謝罪した。
そのまま手を引きかけた守道だったが、指先から掌に伝わるオタベックの温度を意識すると、何故か動きを止める。
「…?」
そんな守道の行動に訝しげな顔をしたオタベックは、直後彼の手が自分の頬を撫でた事に息を呑んだ。
「…」
こうした温もりに触れるのは、どれくらい久しぶりの事だろうか。
昔から肉体関係の類については非常に淡白で、ロシア留学した後も流石に夜の女性達を買うような真似は避けていたが、人肌恋しくなった時にだけ、後腐れのない相手と一夜を過ごす事もあった。
いつの頃からか常に人とは、家族とですら一線を引いた生活を送っていた守道にとって、そうした温かさは縁のないものだと思っていたからだ。
しかし、今自分を見上げているこの青年の頬から伝わる感触と体温の心地良さに、つい手放すのが惜しくなってしまった。
驚愕と、そして隠し切れない怯えを含んだ瞳で自分を見上げているオタベックの姿に、守道の中で嗜虐心のようなものが頭をもたげてくる。
「も、もぅ…手を、離…っ!」
右手に触れる面積を更に拡げ、身を屈めた守道が顔を近付けてきたのに、オタベックは戦慄する。
そして唇に互いの吐息を覚え、粘膜が触れ合うかという寸前。
無防備な声を上げながら顔を背けたオタベックの右手が勢いよく振りかぶり、パン、という小気味良い音が鳴り響いた。