【YOI夢】ファインダー越しの君【男主&オタベック】
第2章 グレースケールではないモノクローム
「判ってるんだよ。俺が知ってる純先輩は、スケートを中断していた一時の存在に過ぎないって事は」
カメラを構えつつ、誰にでもなく呟く守道の横顔を、オタベックは盗み見る。
「現に今、俺がこうしてロシアに留学してるのも、あの人がスケートの道に行ったからだし。君の言う通り、先輩の選択は間違っていない。ただ…俺にとって先輩は、本音を話せる数少ない人間だったから、つい未練がましくなっちゃってね」
そう言う守道の語尾に、僅かな感情が籠められていたのを、オタベックの耳は聞き取っていた。
「ま、俺と君達とじゃ住む世界が違って、先輩は君達側の人間という事さ」
「…貴方は別に、サユリを失ってなどいない」
「慰めはいいよ。所詮俺は、欲しいものは決して手に入らない運命の下にあるんだ」
芝居がかった物言いをしながら、守道は新たな被写体を探しに移動した。
そんな守道の背中を見つめると、オタベックは彼にカメラのレンズを向ける。
ファインダー越しに映る何処か寂しげな後ろ姿に、オタベックは無意識の内にシャッターを押していた。
「君のも出来れば良かったんだけど…折角だから、俺の現像作業に付き合うかい?」
「どうせ、写真が仕上がるまでは待つ必要があるし、ここまで来て仲間外れというのは嫌だな」
撮影終了後。
あまり時間のないオタベックや他の参加者の撮ったフィルムは、事前に予約していた写真屋にスピード現像と印刷を頼み、守道や時間に余裕のある者は、順番に暗室での作業を開始した。
上着を脱ぎ、借りた作業用のエプロンを身に着けたオタベックは、袖を捲りながら写真部の暗室へと入る。
「換気はしてるけど、気分が悪くなったら言って。リールに巻くのは俺がやるから、君は現像タンクの撹拌とタイマーを頼む」
「流石に現像液等は、新品なのだな」
「そりゃ、期限切れの薬品は使えないよ」
守道の指示通りにしながら、オタベックは作業を続ける。
慣れぬ薬品の匂いの中、少しだけオタベックが疲れを覚えていると、すぐ隣から自分を気遣うような視線を感じた。
「大丈夫?無理しなくていいよ」
「平気だ。…少し距離が近い」
「仕方ないじゃん、ココ狭いんだから。それとも、今度は純先輩じゃなくて、俺が気になってる?」