第13章 鯉登家にお泊まりに行こう
「いえ。
泊まらせていただくのでこのぐらいさせてください」
はそう言ってお盆から手を離さなかった。
「そう?
じゃあお願いしようかしら…………」
ユキはおずおずとお盆から手を離した。
(さすがに泊まらせて貰うのに何もしないのは気が引けるもんなぁ…………)
はそう思いながら食卓にユキから受け取った料理を並べ、次の料理を受け取りに台所へ行く。
「美味しそうないい匂いがします。
食べるのが楽しみです」
はそう言って微笑んだ。
の微笑みを見てユキは顔を赤らめる。
「てしたもんな(たいしたもの)作っちょらんどん。
口に合えばよかね」
ユキは恥ずかしそうにモジモジと答える。
「おっかん、ないをモジモジしちょっ?
便所か?」
音之進の言葉に平二は無言で音之進のお腹の辺りをどついた。
「おやっどん何をすっ…………?」
音之進はどつかれたお腹を摩りながら平二を見たが、平二の表情を見て思わず黙り込んでしまった。
音之進が思わず黙り込んでしまうほど、平二の顔は真顔で、をジッと見つめていた。
自分の妻を誑かす若造をどうしてやろうか…………そんな目だった。
「なんて目で勇作君を見ちょっと!」
ユキが平二の様子に気付き注意した。
「……………モス」
平二は納得いかないと言った表情になる。
「すみません。
母を早くに亡くしているのでなんだか懐かしく感じちゃって……………。
気を悪くさせてすみません」
は平二に謝った。
(自分の奥さんが別の男に頬を染めてたら面白くないよねぇ。
まぁ本当は女なんだけど…………)
謝りながらそうは思っていた。