第12章 函館で三輪自動車に轢かれかけたと思ったら誘拐された
夏。
陸軍士官学校も夏休みに入った。
「やっぱりいつの時代になろうが何歳になろうが夏休みって嬉しいなぁ………」
は前世の時の学生時代をしみじみと思い出した。
「まぁその夏休みが北海道で過ごすことにならなかったらもっと良かったんだけどね……………!!!」
はストレスの原因である父、幸次郎に会いたくなかったので夏休みを東京で過ごそうと思っていたら幸次郎が会わせたい人がいるとの事で北海道に呼び出された。
ちなみに幸次郎は家を北海道と東京にそれぞれ持っている。
幸次郎との待ち合わせ場所である函館のとある場所まで馬車に揺られながら景色をぼんやり眺める。
(会わせたい人って誰だろう?
まさか尾形じゃないよね?
北海道に来ちゃったけど第7師団の本部がある旭川じゃなくて函館だから尾形達に会わなくて済むよね……………?)
は顎に手を当てて考え込む。
「お客さん。
言われた住所に着きましたよ」
「ご苦労様でした。
これ料金です」
馬車の御者に声をかけられては馬車から荷物を持って降りると御者に馬車の料金を支払う。
「またのご利用お待ちしてます」
料金を受け取った御者がペコリと頭を下げる。
も無言で御者に頭を下げると後ろへ振り返り、歩き出そうとした。
「邪魔じゃっ!!」
ドッドッドッと大きなエンジン音がする三輪自動車ド ディオン ブートンに乗った色黒の少年には轢かれそうになった。
「何あの危ない運転はっ…………!!!」
少年に轢かれかけたのに謝りもせずむしろ邪魔と言われては頭にきた。