第16章 世間は狭い
「どうかしたか?」
「いや、紅郎さんが奥さんにものすごいぞっこんだったことに驚いたというか…」
「あ? たしかに今も惚れてるし、正直独り占めしたいけどな。でも、仕事で輝いてるあやも好きだし、あやもアイドルをしてる俺を好きでいてくれてるから、お互いのために仕事してるってのはあるな」
「ふむ…」
三毛縞がなにやら考え込んでると、夜なのに呼び鈴が鳴った。三毛縞が応答すると、慌てた様子で玄関に向かった。俺もついて行くと、そこには顔が赤い女と、それを介抱する守沢の嫁さん、仁兎の嫁さん、あやがいた。
「あ、紅郎くん」
「あや、どうしたんだよ? いつもの嫁会じゃ?」
「うん。三毛縞くんの奥さんも高校の同期でね。今日はうちのお店に来てくれて、夜も旦那さんがいないからってことで美咲ちゃんたちに声をかけて居酒屋さん行ってたの」
「で、三毛縞の嫁さんが酔いつぶれたと?」
あやの頭を撫でながら話してる間、三毛縞は困惑していた。
そりゃ家にいると思ったら友達と出かけて酔いつぶれたらびっくりもするか…でも、三毛縞に連絡入れてなかったのか?
「そういや、全員今日のこと旦那に言ってあるのか?」
「うん。言ってあるよ」
「同じく。あ、花音ちゃん、送っても返事がないから分かってないかもって…」
全員三毛縞を見ると、三毛縞はスマホを確認すると目に見えて落ち込んでいた。そこに嫁さんたちが追い打ちをかけた。
「三毛縞くん。少しは夫婦の時間も作ってあげてください」
「三毛縞くんには気にせずに仕事を頑張って欲しいとは言ってたけど寂しそうでしたよ」
「忙しいのはわかるけど、相手の身にもなってください」
「……自分にも刺さるな、これ」
「え、紅郎くんは大丈夫だよ? いつも心配してくれるし、何かあったら連絡もくれるもん」
「千秋くんも遠征の仕事であっても毎日必ず連絡くれますよ」
「なずなくんは一緒に家事もしてくれるよ!」
惚気すら追い打ちになり、三毛縞は苦しそうだった。
「俺たちは帰るからお前は自分の嫁さん介抱してやれ」
「す、すまない」
「別に俺のことはいいからよ、嫁さんのことも大事にしてやれよってこれは余計なお節介だったな」
俺は荷物を持って嫁さんたちと一緒に退散させてもらった。
そっからは順番に嫁さんたちを送り届けて、家に帰った。