第15章 であい
「鬼龍」
「どうしたんだ、守沢」
「鬼龍は水瀬さんのなにに惹かれたんだ?」
仕事で一緒になった守沢に仕事終わりで聞かれたことに首を傾げた。守沢は意味もなくそういうことを聞くヤツではないとわかってるからというのもあるが。
「いきなりどうしたんだよ」
「先日、水瀬さんが我が家にお泊まりに来た時に馴れ初めを聞いたが、何故鬼龍が自分に告白したのかと首を傾げていてな。少し気になったのだ」
「あ? 守沢の嫁さんと2人じゃなかったのか?」
「美咲が俺の泊まりの日を勘違いしていてな、夜も遅かったしそのままお泊まり会をしてもらったんだ」
「なるほどな」
あやとの初対面、というか会ったきっかけは最悪だったな。上の商品を取ろうとしてバランスを崩したあやを支えに走ったまではよかったが、支えてしまったのがよりにもよって柔らかい胸だった。セクハラで通報されていたらアイドルを続けるどころじゃなかったな。しかも、あの柔らかい感触がなかなか忘れられなくて大変だった。
「で、どこに惚れ込んだのだ?」
「そうだなぁ…」
初めての一人暮らしで、お互い同い年ということもあり、気兼ねない友達だと思っていた。出会いはともかく、友人としての日々はとても穏やかで居心地のいいものだった。
それが変わったのは、あやのダチが結婚することになった話をした時だった。
ーーー 鬼龍くんが結婚するのはどんな人だろうね。優しい人だといいね ーーー
自分でも驚くくらいショックを受けた。友人だと思っていたのに、俺はあやが離れてしまうのが嫌だと思ってしまった。それでようやくあやのことを恋愛対象としてみていたのに気づいた。そっからどうしたらあやが自分の隣にずっといてくれるのか悩んだ。
ーーー 水瀬、好きだ。俺の嫁さんになってくれねぇか? ーーー
ーーー え、え…? よめ? え? ーーー
悩んだ結果、まず好きだって気持ちを伝えた。あやは理解した途端それまで見たことがないほどに顔を赤くして狼狽えていた。
ーーー あや、俺とこれからもずっと一緒にいてくれねぇか? ーーー
ーーー ……私なんかで、いいの? ーーー
1年後にプロポーズした時は思わず抱き締めていた。お前じゃないと駄目だって気持ちを込めて……