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かぐや月

第15章 であい


 これが私と紅郎くんの再会した日の出来事だった。
 そのうち学校や仕事で私も帰りが遅い時にはスーパーで紅郎くんと遭遇したり、お互い一人暮らしだから作りすぎたおかずを交換したり、時間が合えばどっちかの家でご飯を食べるなどと特に恋愛に発展するようなことはなかった。
 紅郎くん自身、恋愛ごとに疎い。実際紅郎くんに告白して玉砕した子を小学校から何人か見ていたから、恋愛に発展する可能性はないと考えていたのだ。

「……紅郎くん、なんで私に告白してきたんだろ?」
「え、あやちゃん。どうしたの、急に」
「水瀬さんを愛してるから告白したんじゃないのか?」

 思い出せば思い出すほど、紅郎くんが私のどこを見て好きになったのかわからない。恋人になるまでは仲のいい友達みたいな感じだった。それが崩れるのが怖くて、また初恋の頃のように焦がれそうになる気持ちを隠していたくらいだ。

「ご飯を一緒に食べた後に、好きだって言われただけだから…」
「え、ご飯? デート?」
「ううん。1人暮らし中はお隣さんだったから…あの時は紅郎くんのお家でだったかな?」
「…付き合う前から仲良しだったの?」
「んー…お隣さんになってからの方が関わりが多かったかな」

ーーー 水瀬、好きだ。俺の嫁さんになってくれねぇか? ーーー

 あの時の告白は、今思えばプロポーズにもなるのかな?

ーーー あや、俺とこれからもずっと一緒にいてくれねぇか? ーーー

 でも、プロポーズはその翌年、就職して慣れてきた頃に、婚約指輪まで用意されていた。紅郎くんが自分でデザインしたもので、今も私のアクセサリーボックスに大切に保管している宝物だ。

「2人って、最初にいつ会ったの?」
「一番最初は幼稚園だけど?」
「じゃあ、幼馴染だったのか?」
「ううん。幼稚園と小学校低学年まではたまに遊んでたけどそれ以降は思春期も入って話すことさえなくなったよ」
「でも、また会ったから付き合って結婚したんだよね?」
「うん。専門学校に入った時のマンションのお隣さん同士だったから」
「そういえば鬼龍も夢ノ咲を卒業してから一人暮らしをしていたな」

今となっては、お互い好きなのはわかっていることだからあれこれと掘り返す必要はないだろうと結論を出して私は烏龍茶を飲んだ。
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