第9章 年明け
「それだけあやが仕事に頑張ってるってことだな」
「よっし、姉ちゃんのやることがなくなるように正月準備を進めよう」
仕事で疲れてるであろうあやを労うためにも、俺も妹も御節作りは丁寧にかつ迅速に行った。その間父ちゃんは正月飾りの用意や買い出しをしてもらった。
「それじゃあ、迎えに行ってくるな」
「おう、気を付けてな」
「ちゃんとまっすぐ来いよ、兄貴ぃ」
正月準備が終わり、俺は実家の車を借りてあやの迎えに向かった。あやの店のある辺りまで来たら適当にパーキングに停めてから迎えに来てることと待ってる場所をメッセージで送った。
それから時間が経つことなく、あやはやって来た。
「紅郎くん、遅くなってごめんね」
「そんなに待ってないから気にすんな。仕事お疲れさん」
「紅郎くんもお疲れ様。コーヒー買って来たんだ、飲まない?」
「お、ありがてぇな」
車の助手席にあやが乗り、俺にコーヒーを出してくれた。一口飲むと身体が温まった気がしてきた。
「そうか。そんじゃあ、帰るか」
「うん」
少しコーヒーを飲んでから、ドリンクホルダーにコーヒーを置いてから俺は車を発進した。あやは手に自分用のコーヒーを持って飲みながら、色々と話してくれた。
「今日はパーティやデートの人が多くていつもより気合が入っちゃった」
「女は着飾りたいもんだからな」
「それもあるけど、デートの人には一応着なおし方も言っておいた。なんか姫はじめとかありそうだと思って…」
「あれってたしか2日だろ」
「色々あるけど元は女性が家事を年明け最初にやるからってのもあるよ」
「マジか」
実家に着くとあやには妹がくっついて離れなかったので俺は父ちゃんと晩酌した。
「何もお手伝いできなくてすみません」
「何言ってんの。それまでにいっぱい手伝いしてくれただろ」
「そうだよ、休みの日も一緒に買い物来てくれたし、父ちゃんの代わりに面談とか来てくれたし、このくらいさせてよ」
「待て、俺聞いてないぞ?」
「言うタイミングがなくて…」
「俺だって娘たちに囲まれたい」
「私だって姉ちゃんとデートしたい」
「おいおい」
話してたら知らなかったことが多くて、そのことを聞いたりしているうちに大晦日は元旦になっていた。