• テキストサイズ

かぐや月

第9章 年明け


 出会ってから随分と経つが、俺とあやにとってクリスマスは仕事だ。俺は年末年始の特番の収録や年末前に締切りの衣装の依頼消化をしているし、あやもクリスマスに指名予約が一日中入っていて、お互い帰るのが遅くなるのだ。
 その分2人とも元旦から4日間の連休をとっているから、大晦日は仕事が終わり次第俺の実家で父ちゃんと妹と一緒に元旦を迎える予定だ。

「では、皆、羽目を外しすぎぬようにな」
「来年もよろしくお願いいたす!」
「お前ら、ちゃんと休めよ?」

 大晦日の昼前、仕事を終えた紅月は事務所で分かれた。
 だが、蓮巳は実家の寺の手伝い、神崎も地元の行事の手伝いがあるため、果たしてあいつらのは正月休みに入るのかどうか毎年疑問に思ってしまう。今頃、2人の嫁さんたちも旦那の実家の手伝いで走り回っているに違いない。

「お、紅郎。仕事お疲れさん」
「兄貴、御節作るぞー!」

 実家に帰れば、父ちゃんと妹が正月準備をしていた。こっちの大掃除はもう昨日のうちに終わらせていたらしい。家は今月に入ってあやと2人ですぐにやったから既に終わっている。

「夜になったらあやちゃんも迎えに行かないとな」
「どうかな…今日も1日中予約が入ってるって言ってたから、いつもより遅い方がいいかもしれねぇ」

 普通なら正月準備は奥さんが率先するとか思ってるだろうが、美容師のあやはそうはいかない。まず大晦日にパーティに参加するという客の予約、そして初詣に向けて着物の着付けからスタイリングの予約がたくさん入っていると先月末の時点で聞いている。
 特に年末年始は美容業界も店舗によって休業期間が違うらしいが、あやのところは大晦日までがっつり営業、代わりに正月休みが長めになっている。

「姉ちゃんのところってたしかセレブ御用達のとこだろ? それで指名ってすごいんじゃねぇの?」
「あぁ、そういやこの間ロケで一緒になった女優さんも言ってたな」

 あやが所属している店舗は他の店舗と違い、各スタイリストごとに個室がある。そのため芸能人も結構通っている。中でもあやは数少ないネイリスト兼任のスタイリストなものだから女性客の指名が多いらしい。仕事で一緒になった女性芸能人から担当したスタイリストの話を聞いてると6割は担当していることがわかった。
/ 63ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp