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かぐや月

第5章 夏といえば


「浴衣フェアですか…」
「そうそう。お祭りの期間だけね」

職場のサロンでは夏になるとお祭りに行くために浴衣の着付けからスタイリングの一通りのコースが期間限定で行われている。今年はスタッフもその期間中浴衣を着て仕事をすることで、他のお客さんにもら予約してもらう作戦のようだった。
私自身、仕事に就いてから人の着付けばかりしていたから自分で着るなんてことはなかった。そもそも浴衣すら持っていない。どうしたものか…

「そもそも身長に合うものがあるのかだよね…」

仕事帰りにまだ開いている呉服屋さんを覗いてみたけど、種類が色々とありすぎて何から見ればいいのかわからない。

「あやじゃねぇか、珍しいな。仕事終わりか?」
「あ、紅郎くん。うん。ちょっと仕事で浴衣が必要になりそうで…」

浴衣コーナーの前で悩んでいたら紅郎くんに声をかけられた。

「着付ける側じゃねぇのか?」
「期間限定でスタッフも浴衣着ることになったの。紅郎くんは、どうしたの?」
「俺は紅月の衣装用の反物を見に来たんだ。もう俺も仕事終わってるから一緒に帰るか」
「お仕事お疲れ様」
「ありがとうな……あや、俺が浴衣作っていいか?」
「え? でも、お仕事忙しいのに…」
「俺が作りてぇんだ。だめか?」

紅郎くんに浴衣を作ってもらうのはとても魅力的だった。でも、紅郎くんはアイドルとしてもだけど、デザイナーの仕事も忙しい。紅月の衣装をメインにしているとはいえ、紅郎くんに依頼しているお客さんもたくさんいるはずだ。なのに、奥さんだからと言って作ってもらうのはいいのかと悩んでしまう。仕事に差し支えなかいかが心配だったのもあって、すぐ答えられなかった。

「無理しない? お仕事の方優先してくれる?」
「…こういう時くらい我儘言っていいのに…わかった。仕事に差し支えないように進めるから、作らせてくれ」
「……お願いします」

こうして私は紅郎くんに浴衣を作ってもらうことになった。そのまま紅郎くんにいろんな反物を合わされ、選んでくれた。
それからというものの、紅郎くんも私もお仕事が色々あったりして浴衣の進行状況についてわからないままとなった。
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