第5章 夏といえば
「あや、浴衣出来たから試着してくれ」
「え? もう? 早くない?」
「そうでもないぞ? 合間に進めてたからな」
久しぶりにお互い早く帰れて、夕飯を一緒に作って食べ終えてから紅郎くんからいきなり言われた。私からしたら早くできたほうじゃないかと思うんだけど、紅郎くんにしてみたら朝飯前だったらしい。
どうせならばとお風呂に入ってから着てみようと思って、お風呂の時に一緒に持っていった。浴衣の着付けは自分でもできるからいいとして、髪はどうしようか。昔作ったアクセサリーの中から使えそうな簪を選んだ。
「お待たせ。どうかな?」
「…やっぱその柄似合うな。綺麗だ。動きにくいところはないか?」
「大丈夫だよ。あとは、作業する時は袖をあげないとかな」
「あぁ、そうだな。襷上げすれば大丈夫だろ…」
「どうかした?」
「いや…あやが髪を上げてるのが色っぽいっつーか…」
「そう?」
「あぁ、食いたくなる…」
紅郎くんの目付きが色っぽくなったのがわかると、私は…
「……だめ。今食べられたら仕事で着られなくなっちゃう」
「じゃあ、もう1着着るか?」
「なんでもう1着あるの?」
「この間呉服屋行った時に似合いそうな柄があったからよ」
ダメか?と首を傾げられてしまったら、断れなくて、紅郎くんからもう1着浴衣を受け取って、また浴衣を着替えた。
今回は髪留めも変えて、浴衣用の下着は付けないで、素肌のまま襦袢と浴衣を着た。さっきから紅郎くんのあの目付きを思い出す度に身体が火照ってくる。これからすることに期待してしまう自分がいる。
「もういいよ?」
「おう。その柄もやっぱり似合うな」
寝室から出て、リビングで待っていた紅郎くんを呼ぶと、紅郎くんはソファから立ち上がって私を見ていた。
「食べてもいいか?」
「うん。いっぱいいいよ?」
「それ言われたら止まれそうにないな…」
「んっ」
紅郎くんにそのまま抱っこされて、キスされた。触れ合うだけのものから段々深いものになって、舌を絡ませていた。一息つくために唇を離してもすぐにまたキスをした。その間に紅郎くんの足は寝室に向いていて、布団の上に寝かされた。そのまま髪留めを外されてしまった。