第3章 その心は
「君、本当に何も覚えてなくて結婚したのか?」
仕事の関係で久々に会った斎宮にあやのことを確認すると、斎宮は覚えていた。
「俺は、お前が幼稚園からの同級生を覚えている方がびっくりだ」
「失礼だね。たしかに最初はわからなかったが名前に聞き覚えがあったから、確認したら思い出したのだよ」
「マジか…」
「まったく君は…これでは彼女も浮かばれないね…何度か遊んだこともあっただろう。君の方が近所だったのだから」
ため息をつきながら話す斎宮に言い返す言葉もなかった。
「まあ、今は君の元にいるのだからいいのではないか?」
「そうだけどよ…つか、なんで覚えてたんだよ?」
「…そうだね、彼女が年を重ねるにつれて僕の見た中で美しく成長していたからかな。あれは仁兎と同等だね」
「……なんでお前が覚えてて、俺が覚えてないんだ」
「眼鏡ではないのか? 昔はかけていなかったからね」
「何度も外してるところは見てるが?」
「……もしかしたら髪の長さかもしれないね。僕の覚えてる限り、昔は短かったから」
とりあえず、今度実家に帰ったら幼稚園から中学の卒業アルバムを片っ端から見ていくしかねぇかと考えてたら、家に帰ったあとにテーブルの上に幼稚園から高校までの卒業アルバムが出ていて驚くことになった。
「やっぱり高校から色気が出たのかな?」
高校の卒業アルバムの横には高校の頃に購買やイベントで売られていたプロマイドの入ったアルバムも広げられていて、あやはそれらを眺めながら首を傾げていた。
とりあえず、あやには色々問い質す必要がありそうなのはわかった。