第6章 4.決断
「その…なんで私なの?」
震える声で私は正直に思った事を白石くんに告げた。
理由が分からなかった。
なんでこんなにも彼は私に親切にしてくれるのだろうか?
私は彼の優しさに甘えてて良いのだろうか?
こんなの綾子ちゃんに変わって白石くんに甘えてしまっているだけではないのだろうか?
そう思うとザワザワと自分の心がざわついていく。
私は綾子ちゃんの代わりに白石くんに甘えてしまいたいだけなのではないだろうか?
彼の負担になってないだろうか?
そんな不安がジワジワと私を蝕んでいくのが分かった。
「なんでやろうな?」
「え?」
「俺も分からへんのや」
そう言って白石くんは苦笑する。
「せやけど【名前】の力になりたい…なんて、おこがましい事を考えてしまうんよ」
白石くんがそう言って笑う。
その微笑みが丁度彼の後ろにあった夕日の陽の光と重なって妖艶に微笑んでいる様に見えて、心臓がドキリと跳ねる。
白石くんの整った顔で綺麗に微笑まれると心臓が持ちそうにないなと再認識させられてしまう。
「あ、迷惑やったら言ってな?」
「そんな!迷惑だなんて思ったことないよ。むしろいつも迷惑かけてしまってるなと思ってるぐらいなのに…」
「この間も言ったけど迷惑なんて思ったことあらへんよ」
私を励ますように白石くんがフォローを入れてくれる。
それが嬉しくなってしまう。
白石くんの言葉は私を勇気づけてくれるには十分すぎるものだった。
先程までの不安な気持ちが薄れていくのを私は感じていた。
「マネージャーの件な…確かに下級生の今後を考えると雑務やってくれる人がいたら助かるなとは思っとるんやけど…」
白石くんがゆっくりと言葉を紡いでいくのを私はただ黙って耳を澄ませて聞く。
彼の声音が心地よかった。
「男子テニス部のマネージャーやれば【名前】の克服したい事の助けにもならへんかな?とも思ったのもあるんやけど…何より俺自身がマネージャーが【名前】やったらええなと思って」
照れくさそうに笑う白石くんに私は釘付けだった。
彼の言葉に心臓が煩く高鳴る。
なんでこんなにもドキドキするのだろうか?
心臓の音が煩くて聞こえないはずなのにもしかして聞こえてしまっているのではないだろうか?と不安になる。