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ゆるやかな速度で

第4章 3.再会


「このハンカチならまだ使ってへんやつやから使ってや」

そう言いながら相手はハンカチを小さく丸めてフェンスの穴を綺麗に通して私側へ差し出してくれる。
私は言われるままにそのハンカチを受け取った瞬間に自分が泣いているという事にようやく気が付いた。
頬を伝う涙に驚いて「え」と声をあげてしまう。
受け取ったハンカチを使ってしまっても良いのか悩んだが、相手の好意を無下にする方が失礼だと判断して私は有り難く目尻を拭わせて貰った。

「あの……これ、ありがとうございます。ちゃんと洗って…返します」
「気にせんでええのに。やっぱり綾子に聞いた通りの子なんやね」

そう言われて驚いて俯いた顔を再度あげる。
綾子ちゃんの名前を言われて驚く。
私が顔をあげると、私にハンカチを貸してくれた彼だけではなく、いつの間にか彼の隣にもう1人男の子が立っていた。
緑のヘアバンドが特徴的な人だった。

「綾子が言ってた【名前】ってお前やろ?」
「えっと……はい」
「もうユウくん!なんで威圧的なん?!可哀想やろ!」

私が無意識に震える声で返事をしていたようで、それを直ぐに察してくれた彼が後からやってきた彼を叱ってくれる。
その言葉を聞いて、少しだけシュンと落ち込んだ表情になるヘアバンドの彼が先程よりは威圧的な声ではなくなっていた。

「いや、小春が浮気してるかと思ってな」
「そんなんやないって状況なの分かっとる癖に」

はぁ。とため息を吐いた彼は私に「ごめんなぁ」と謝る。
私は謝られた事よりも彼らが互いに「小春」「ユウくん」と呼びあった方に驚いて失礼ながらまじまじと見つめてしまう。
その名前には凄く聞き覚えがあったからだ。

「もしかして綾子ちゃんの…お友達の?」
「ピンポーン!正解!」
「まぁ、知り合いやな」
「もう、なんでそこで照れるん?友達で合ってるやない」

小春くんが隣にいるユウジくんに突っ込みをいれる。
そして私は綾子ちゃんからよく話題に出る2人の登場に私は驚いていた。
お笑い好きの綾子ちゃんは去年、同じクラスに凄く面白い2人がいるとよく話してくれていた事を思い出す。
そう言えば何度か挨拶で会釈をした記憶がようやくそこで蘇ってきた。
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