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ゆるやかな速度で

第4章 3.再会


私が2人から離れようとした瞬間に左隣にいた金太郎くんに腕を掴まれてしまう。
グイッと腕を引かれて私がよろめくと、咄嗟に右隣にいた白石くんが自分の方へと私を引き戻してくれたので倒れる事はなかった。
でも両側から2人に腕を掴まれてしまい私は動く事が出来なくなってしまう。

「えっと…」

私はどうしたら良いか分からなくなってしまう。
助けてくれた事にお礼を言うべきなのは分かっていたが、この奇妙な状況に混乱してしまい何を言えばいいか分からなくなってしまったのだった。

「…【名前】が」
「え?」
「【名前】がテニス部見に来てくれたら嬉しいわ」

白石くんの言葉に驚いて私は右を向くと少し照れくさそうに笑う彼と目が合う。
その表情にドキリと私の胸が跳ねる。
綺麗な人が照れくさそうに笑うとそんな表情になるのだななんて白石くんに見惚れてしまった。

「【名前】、来てくれへんの?」

私が白石くんに見惚れていると左側から金太郎くんの声がして、驚いて先程とは違う意味でドキッとする。
私が彼に目を向けると不思議そうに私を覗き込む金太郎くんと目が合った。
私が白石くんを見てドキリとしてしまったのがバレてしまったのかと内心焦ってしまう。
別にやましいことなんて何も無いはずなのに何故今の私はこんなにも焦ってしまっているのだろうか?
でも私を覗き込む金太郎くんの瞳はただ純粋に私を一緒にテニス部へ行こうと誘ってくれているという事だけ分かった。

「えっと…その、お邪魔じゃなければ」

私がそう返事をすると、横から白石くんが落ち着いたトーンの声で告げる。

「邪魔なんてこと、あらへんから」
「…じゃあ、お言葉に甘えて」

2人に誘われて私はテニス部へと一緒に向かう事にする。
ドキドキと心臓の音が煩いのが何故なのかなんて分からなかったけれど、先程見た白石くんの表情が何故か私の頭から離れてくれなくて私はほんの少しだけ困ったのだった。

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