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ゆるやかな速度で

第4章 3.再会


「その…私、これからは頑張ってみようと思って…」

私がそう告げると、何について頑張るのか察しの良い彼女たちは直ぐに分かったようで、驚いた表情の後で穏やかな笑みを私に向けてくれた。
それは先程、綾子ちゃんが私に向けてくれたものと同じだった。
私はその事に驚いてしまう。
綾子ちゃん以外も私の事を気にかけてくれた人がいたという事に。
先程まで恥ずかしくてしょうがなかったのに、彼女たちの微笑みに対して胸がいっぱいになる。

「そうなん?何かあれば私達も力になるし相談してや」
「うんうん。いつも宿題見せてもらったりしとるし、お礼させてや」
「あんたはええ加減、宿題は自分でしぃや」

笑いながらツッコミを入れ始めたところで、彼女たちが漫才を始めてしまい私は面白くてクスクスと笑ってしまう。
それに気を良くしたのか彼女たちも「他にも新作考えてみたんやけど~」とウキウキとした表情で話してくれる。
綾子ちゃんも大事な友達だけど、こうして気さくに私と話してくれる彼女たちもかけがえのない友人だなと改めて思った。

「お前ら、こないなとこ立ってないで席付けやー」

私達が教卓の近くで談笑しているといつの間にか先生が教室へ入ってきていて注意をされてしまう。
もうそんな時間になっていたのかと私達は慌ててそれぞれの座席へと向かう。
そして着席をする前に私は勇気を出して、隣の席の男子へと挨拶をする。

「お、おはよう」
「!?お、おはよう」

話しかけられると思っていなかったようで、物凄く驚いた表情をしてから、彼は私に返事を返してくれた。
それを聞いて私は少し嬉しくなって笑顔で頷く。
先生が話し始めてしまったので彼とは挨拶だけで終わったが、普通に返事を返してくれた事に私は嬉しくなる。
クラスの人たちが優しくて良かった。
心の中で感謝しながら私は先生の話を聞いていたのだった。


***


色々な事があった1日だったなと私は部活に向かう綾子ちゃんと別れてから昇降口を出て、今日のことを再度思い出していた。
今日の私はたくさんの人と話すことが出来た。
少しだけ男の子にも『おはよう』や『さよなら』ぐらいの挨拶ならすることが出来たので嬉しくなる。
今までから比べればかなり頑張った方だと思う。
白石くんのおかげだなと心の中で感謝をする。
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