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ゆるやかな速度で

第3章 2.不思議な人



私が関東から関西に引っ越してきて、転校した小学校のクラスでは、クラスの中心的な男子とその取り巻きが存在していてその人達が絶対という地獄の様な場所だった。
彼らが私に対して何が気に入らなかったのかなんて事は、今でも私には分からない。

ただ気に入らない。

それだけの理由なのか、この頃の私が彼らになじられるのは日常茶飯事だった。
最初はちょっとした、ちょっかいをかけてくる程度だった。
関東に住んでいた時はそんな風にクラスメイトにされた事が無かったので私はどう対応していいか分からなかった。
その反応が面白くなかったのか彼らの行動は日に日にエスカレートしていっていた。

この頃は確か私が話すと喋り方が標準語だから、変なのと言われ続けていた時だったと思う。
だから一生懸命、関西弁を練習した。
西村さんに教えてもらったり、おばあちゃんに教えてもらったりと家で一生懸命練習した。
そしてその成果を披露すべく、私は関西弁で話す様になった。
でも彼らはそれもお気に召さなかった様で変な口調だと延々と私を囃し立てる。
今なら分かるけれど、きっと彼らは私が何をしてもきっと気に入らなかったのだろう。
でもこの時の私はきちんと話しているはずなのにおかしいと言われて自信をなくしてしまい半泣きで俯いていた。

「おかしくあらへんわ!」

そんな時、私を庇うようにソッと背に隠すように立ちはだかってくれた女の子がいた。
それが綾子ちゃんだった。
彼らに逆らう事が怖いのかクラスメイトの殆どは私を助けようとはしなかったが、彼女だけはこの時からずっと私を庇ってくれたいた。
小学生の時から明るくて元気で、そして優しい綾子ちゃんは転校してきて右も左も分からない私を助けてくれた。
そして男子達からも守ってくれようと一生懸命だった。

そんな彼女を巻き込みたくなくて、私が何度『大丈夫だから』と私を構わないで欲しいとお願いしても彼女は笑顔でこういうのだ。
『私は【名前】と一緒にいるのが好きだから一緒におるだけや』
彼女はとびっきりの笑顔で私にそう言うのだ。
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