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ゆるやかな速度で

第13章 11.視線


「ごめんなさい、気のせいだったかも」
「具合悪いとかやない?平気なん?」

私の否定の言葉に小春くんが心配そうに私を覗き込む。
私は自分の気のせいで気を遣わせてしまい申し訳なくなってしまい、どう心配を解こうかと思っていると小春くんの横から不機嫌な表情をしたユウジくんが顔を出した。

「小春を心配させるとはええ度胸やな?」
「そんなつもりは…!」
「はいはい、そこまでや、ユウジ。別に【名前】もわざとやないやろ」

私が更にどう誤解を解こうと思っていると、いつの間にか近くにやってきていた白石くんが助け舟を出してくれた。
そのことに少し安心し、私は具合が悪いわけではないという事と、ここ最近思っていたことを告げた。

「その…なんか少し違和感があった気がして…」
「違和感?」
「視線を感じた気がしたけど別に周りはいつも通りだし…気のせいだったんだと思う」
「…さよか。でも変なことあれば直ぐ言うんやで?」
「うん」

私の言葉に少し考える仕草をしてから白石くんがそう告げる。
私も下手に周りに心配や気を遣わせたくなくて直ぐに頷き、そして何か他にも起きた際は直ぐに誰かに告げることをこの場で約束をしたのだった。

それでもやっぱり違和感が消えることは特に起きなかった。
部活動の時に、やはりコートの傍で何かしらの作業をしていると、時たま視線のようなものを感じていた。
でもだからと言って、物を隠されたりとか、常時視線を感じるなどいった事は一切起こってはおらず、時たま少しの間だけ視線を感じているだけなので何も起きていないといえば起きてはいない。
校内ではそういった視線はほぼ感じることはなく、教室でも特に何も感じていなかった。
だからこそ視線は本当に気のせいじゃないかと、人目につく所での活動が今まであまりなかったから、緊張して自意識過剰になっているのではないか?と自身に思いきかせ始めた頃の事だった。
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