第13章 11.視線
「はぁ~~ほんま真面目やなぁ【名字】は」
「え?」
「いや、今まで部活とかに携わっとらんからか?う~~ん」
渡邊先生が独り言モードに入ってしまい、私は戸惑ってしまう。
「あのな気にせんでええねん」
「え!?」
「【名字】の考えはあれやろ?練習の時間奪ってしもうて申し訳ないとかやろ?確かにそういう側面もあるかもしれへん。せやけど、ボール出しとかボールチェックとか、コートの草むしりとかをやる事から学べることもあんねん」
先生の言葉に私は小さく『あ』と声が漏れる。
先生にも考えがあってそういう采配にしていたということだ。
マネージャーになりたての私が口を出すことではなかったということで、自分の自惚れた考えに恥ずかしくなる。
「だからな、全部が全部マネージャーだけがやらなくてもええねん。まぁ、でもこのまま【名字】が1人ちゅーのもなぁ…。来年卒業だし下級生のマネージャーはスカウトせなあかんかもしれへんな」
「その…出過ぎたことを言いました」
「え?あ、気にせんでええんよ?【名字】がそういう事を発言出来るようになったちゅーことはええ傾向や。バンバン思ったことは言うて欲しいねん」
「でも…」
「でもやない。絶対考えはいう事!これ約束やからな?」
私の言葉を遮る様に渡邊先生が念押しで私に圧をかけるように言う。
その迫力に私は全力で頷くと、先生は『分かればええねん』と言ってニカッと笑う。
その表情はいつも通りの先生で少し安心する。
私は先生に言われたことを肝に銘じてから鍵を返却し、職員室を後にする。
「【名字】先輩?」
「野宮くん?」
すると、職員室から出た所で野宮くんに声を掛けられ私は彼の方へと歩み寄る。
合宿で少し打ち解けたからだろうか?彼の傍に行くことはそこまではばかられなかった。