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ゆるやかな速度で

第11章 9.合宿03


【名前】を背中に背負いながら、金ちゃんと財前とようやくスタート地点へと帰ってくると、中々帰ってこない俺らを心配しとったのか皆がこちらへと駆け寄ってくるのが見える。
俺らを取り囲む様にこちらへと辿りついた皆の視線は俺の背中へと注がれたのは言うまでもあらへんかったのやった。

「どないしたん!?」

最初に驚いた声を上げたのは小春やった。
部内で特に【名前】の事を気にかけてさり気ないフォローをしてくれとる小春なので物凄く心配した悲鳴をあげとった。
そりゃあそうやろうなと俺は何から説明すべきかと、俺の隣でちょい汚れとるジャージを着てる財前と金ちゃん、そして俺の背で寝入っている【名前】の事を想像して苦笑するしかなかったのやった。

「財前、何があったん!?」
「…白石部長に聞いてください。説明すんの面倒いんで」

苦笑する俺を見てどう声をかけてええか皆が一瞬悩んだ隙きに素早くケンヤが財前へと質問を投げる。
せやけど財前は面倒くさそうにそう返事をするだけで怠そうにしとった。
確かに一から説明を懇切丁寧にするタイプやないもんなと俺は財前を見て再度苦笑する。

「あー…えっと、何から説明すればええか悩むんやけど」

俺はそう切り出してから何があったのか順番に説明をしたのやった。
【名前】と一緒に森に入ったら脇道から財前たちが出てきた事、金ちゃんが【名前】に抱きついたタイミングが悪くて足を捻ってしまったこと。
そしてここまで帰ってくる間に彼女が俺の背で寝入ってしまった事を簡単に説明すると、【名前】が気を失う様な出来事があったわけやないと判明して小春は安堵の息を漏らした。
それを見たユウジも『小春を心配させんなや』と俺の背に向けて小声で叱責を投げかけたけど、その声音が優しさを含むもので俺は少しだけ驚く。
いつの間にかユウジともちゃんと仲良くなっとるんやなと思うと少しだけ複雑な気持ちにもなり、俺は自身に驚いてしまう。
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