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ゆるやかな速度で

第10章 8.合宿02


「15」

先生がこの場から立ち去ってから私は引いた紙を広げて番号を呟いた。
同じ番号の人と一緒に確かこの森のところグルっと一周して帰ってくれば良いというだけのはずだ。
一体誰が同じ番号を引いたのだろうかと辺りをキョロキョロとしていると忍足くんと目があった。

「【名字】は何番なん?」

私と目が合った彼はこちらへと歩み寄って番号を聞いてくれる。

「私は15だったよ。忍足くんは?」
「俺は3番や。何や折角ならもっと早い数字が良かったな…1番とか」

忍足くんとかな?と思い、番号を告げれば彼は違う番号の様だ。
それにしても何よりもスピードを大事にする彼らしい発言が返って来て私は笑ってしまう。
笑ってしまった私を見ても特に気にする事もない忍足くんも自分と同じ番号の人を探しているのか再度キョロキョロと辺りを見渡していた。
そして丁度その瞬間に近くを通りかかった白石くんに話しかける。

「お。白石やん。もう全員引いたんか?」

忍足くんの言葉に反応した白石くんはその場で足を止めてこちらへとやってくる。

「せや。俺で最後やからな。ケンヤ、ちなみに15番引いた人知らんか?」
「何や、白石は【名字】とか。良かったな」

白石くんの言葉に驚いてしまい私は彼を凝視してしまう。
言葉を発する事が出来なったけれども私の番号を知っていた忍足くんにより私と白石くんが同じ番号であることが判明して白石くんも驚いていた。
2人して『え』となってしまい私達が言葉に詰まっていると遠くの方から財前くんの声が聞こえてくる。

「謙也さーん、順番なんで、はよ行ってくださいよ。速さしか売りが無いんやから」
「なんやて!」

財前くんの発言に忍足くんは条件反射の様に抗議の声をあげる。

「白石、悪いけどここは浪速のスピードスターとして聞き捨てならん事言われたから行くわ」
「ちょ、ケンヤ!?……行ってもうたな」

でも脊髄反射で直ぐに駆け出す事はせずに彼は私達にこの場を離れる事を宣言してから猛スピードで駆けて行ってしまった。
それに驚いた白石くんが彼に声をかけたのだけれども、その言葉は虚しく忍足くんに届くことはなかったのだった。
この場に取り残された私と白石くんの2人は何をどう話して良いのか分からず少しだけ無言になってしまったけれども先に言葉を発したのは白石くんの方だった。
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