第1章 邂逅。
1話
自分とは、一体なんなのだろうか。
自分とは、どういうものなのだろうか。
最初はただ、欲しかった。
それが欲しくて、欲しくて、でも手に入れればそれは塵と化す。魅力を感じず、価値を感じない。
だから俺は、奪い続ける。
その一瞬の煌めきを求めて
「団長...団長。」
...どうやら考え込んでしまっていたらしい。怪訝そうなマチの顔が見える
「いや、なんでもない。行くぞ」
どこか不安そうにマチは俺を見つめる
「気をつけて、団長。なにか嫌な予感がする」
マチの勘はよく当たるからな。ふむ..不安要素は特にない。いつも通りの盗みだ。
だが、念の為
「パクノダ、ウボォーとチェンジだ。マチはシャルナークとチェンジ。」
これで今別れたチームのどれかが無くなってもフォローはできるだろう。
「了解、団長」
それじゃあ、行こうか。
「最初はただ、欲しかった、か」
ハンターハンターの旧アニメを見直しながら考える。
私は、私の答えを見つけた。
彼は、見つけることが出来るのだろうか、分からぬ明日に疲れきったからこそ、彼の旋律はあんなにも落ち着いていたのではないだろうか。
彼の心情を真に私が理解することはないし、そんなことを思って奢りたくもない。
だが、やはり考えてしまう。
無駄で無意味な思考ではあるが、その思考をすることにこそ意味があるような気がするんだ。
どうか、彼の人生が終わる前に、答えを得られますように。
ただ、願うしかない。私にはどうにも出来ない。これは彼の問題であり、直接的な話、彼が目の前にいたとしても、どうにも出来ないのだ。吐き出した言葉は薄っぺらな刃となり、ただ身を切るだけだろう。
ふと、顔を水が伝っていく。
泣いて、いるのか
泣いているのか、私は。
そう、どうにも出来ないことは悲しくはない。どうにも出来たら多分、彼の存在は私の中で塵と化すのだ。多分答えを得ない彼の、どうしようもない悲劇こそ愛し焦がれまた悲しむ自分の矛盾に、気付いている。
その矛盾だらけの感情を産ませる存在にこそ、価値を感じるのだろう。
私は私の答えを得ている。
「あーあ、それにしても」
ハンターハンターの世界に行きたてぇ..旅団会いてぇ..と呟く。
そう、私が唯一単純な苦しみと苦悩を抱えるとすれば
彼らと同じ世界にいないことだけだろう。
彼らと会いたい、会ってみたい。
