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【イケメン戦国】 時を翔ける巫女

第10章 貴方と過ごす安土~三成編~


 大名の一件があり、安土での暮らしに馴染みが出てきた頃――

 私の一日は武将達よりも妖怪との触れ合いから始まる。

 この時代にタイムスリップして最初に討伐した妖怪の時に出会った老婆の姿をした小物の妖怪を筆頭に、城の何処かに潜んでいたらしい多くの小物が私の許に毎日ひっきりなしに訪れていた。
時には、こちらの生活リズムを無視した時間に起こされることも、女中や武将達に話してる時にちょっかいをかけていることもある。
お陰でというべきか、最近は少し寝不足気味である。

 私は欠伸を口の中で噛み殺しながら、朝餉を乗せたお盆を持ってある部屋を目指していた。

(三成君、広間に来なかったな…どうしたんだろう。皆はそんなに心配してなさそうだったけど…)

 足を動かしながら考え込む。
大名の件で後始末に追われているのだろうか。秀吉さんは相変わらず信長さんの為にあちこち駆け回っている。一度手伝おうとしたものの、秀吉さんに断られてしまい。再び城の雑用をこなす日々が続いている。

《考え事か?小娘》

 ふと聞こえてきた声は、もう聞きなれたものだ。老婆の小物はいつの間にか私の肩に座りニヤニヤと顔を覗き込む。

「まぁね」
《恋の悩みか?》
「そんなわけないでしょう。冗談でもやめて」

(三成君には申し訳ないけど、ほとんど接点ないし恋愛へ発展する要素が見つからない……)

 遠くから見かけた時、秀吉さんの仕事の手伝いで忙しそうな姿や、話す時に向けてくれるエンジェルスマイルは容易に頭に浮かぶものの、それ以外には何も浮かばない。
ひたすら考え込みながら、言われた三成君の部屋へと足を運ぶ。

「三成君、いる?」

 襖の前で呼びかけてみるものの、返事はない。

(ここじゃないのかな?)

 首を傾げていると、肩にいる老婆の小物は袖を口元に当て堪え切れない笑いを漏らしている。

「…なによ」
《いやなに。お前はあいつのことをとんと知らんのだなぁと思っただけよ》
「どういう意味?」
《中を見れば分かる》
「は?」

(もし中にいたら勝手に入るってことでしょ? さすがにそれは……)

 そう思うものの、脳裏にプライバシーという言葉を知らない政宗さんの顔がよみがえる。

(……まあ、良いか。多分政宗さんも三成君に対して遠慮なんてしないんだろうし)
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