第9章 貴方と過ごす安土~秀吉編~
秀吉は呆然と珠紀が開けっ放しにした襖を見つめる。
「……今のは…俺を慰めようとしたとか、そういうことか…?」
(って、そんなわけあるか……くそっ)
この短期間に見た珠紀の様々な顔を思い出して、秀吉は熱の残る頬を覆うように口元に手をやり、顔をあらぬ方向に背ける。
(ったく、可愛すぎるだろアイツ…急に、女の顔して……
こんな気持ち、どうやって抑えりゃ良いんだ…!)
「……まずい。妹に、見えなくなってきた…」
次に珠紀に会う時、平然と振舞うためにどれほどの努力を必要とするか、今から不安が湧き上がってくる。
信長の許へ向かう足を動かしながら、次に珠紀に会う時、平然と振舞うためにどれほどの努力を必要とするか、今から不安が湧き上がってくる秀吉であった。